北澤豪さん(左)と社長の治田清紀(右)
[ジョブパーク名古屋の店頭にて]

ジョブパークは「工場や製造業のお仕事探し」ができる店舗。
株式会社ビーネックスパートナーズが運営しています。

教師になるための社会勉強

治田
高校の教師になりたかったんですよ。 自分が高校大学と野球をやっていましたので、高校野球部で指導もしたかったんです。

北澤
教員免許は取られたんですか?

治田
はい、大学4年時には教育実習にも行って地理歴史の免許を持っています。
しかし、世の中のことを知らないのに大学卒業とともに教師になってしまったら、何か間違ってしまうんじゃないか。 一度就職をして社会勉強をしてから、教師になろうと考えました。 免許があれば後からでも教師にチャレンジできますので。

そこから就職活動を始め、様々な業種のことが学べると考えた金融機関に就職することにしました。 教師になるための勉強なので「3年で辞めよう」と。 ですが「働くなら1番を獲ろう」と思いつつ、3年で営業のトップを獲れまして、計画通り次のステップに進めました。

北澤
金融業界でのご活躍、社会人のベースをつくる意味ではいい経験でしたか?

治田
はい、多くの業種と接点が持てるのでとても良い社会勉強になりました。 今の仕事にも大きく役に立っていますね。
その次なんですが、金融機関を辞めるタイミングで、OA関連(今でいうところのITサービス)の企業から「うちで執行役員として働かないか」とお誘いを受けました。 これも教師になるためのいい機会と思い、そちらに入社。
その後、携帯電話が急激に普及するタイミングでその販売を手掛けて、バンバン売れたんです。 多額のインセンティブが入るので「これは面白い、でもこのまま行くと道を誤ってしまうんじゃないか」と思いつつも、これも教師になるための経験(笑)。 ですがその後、携帯電話のインセンティブも減額になりはじめたので、「ここで退職して教師になろう」と考えたのが30歳手前でした。
しかし、はたと思ったんです。 高校卒業で就職する人も多い中、教師になる前に「就職などに関わる仕事をしておかなければ」と。

北澤
高校の教師になって、教え子を社会に送り出すために?

治田
はい、教え子たちの「社会への入り口」について理解しておく必要があると。 その時も熱く「教師になりたい」と思っていた中で、たまたま中途社員の募集をしていた人材サービス会社に入社しました。 約25年前のことです。
私が担当したのは、工場など製造現場への人材派遣。 第一号はコンクリート会社でのバリ取り(きれいに整形する作業)で、就業するのは30代前半の太郎さん(仮名)。 前日に現場を見学して「明日から頑張りましょうね!」「頑張ります!」という感じだったのに、当日朝に現場へ来ないんですよ。 始業の8時になっても。

北澤
心配になりますね。

治田
自宅に電話するとお母様が出られたので「太郎さんは今日から仕事なんですけど、体調が悪いんでしょうか」と聞くと、「え?」という感じ。 どうやら寝坊していると思われる太郎さんに、お母様が「会社から電話来てるよー」と。
太郎さんの「体調悪いって言ってよぉー」まで全部丸聞こえだったんです(笑)。
私からはお母様に「ほんとうにそれでいいんですか?、全部聞こえてましたよ。 ここで働かなかったら、しばらくまた仕事をしませんよ。 現場の責任者には9時に出社しますと伝えてありますから」と。
そうしたら9時前に太郎さんが来たんです。 最初の一歩はすごく大事で、太郎さんはその後とても頑張ってくれ、数年後には工場長になったんですよ。

北澤
初日、諦めなくて良かったですね。

治田
そうなんですよ。 この件が私の原体験なんです。 教師にならず、人材サービスの仕事を25年以上もやっています。

北澤
このお仕事も、人に寄り添い、人の可能性をひらく、教育者のようなお仕事ですね。

治田
優秀な教師は山ほどいます。 教育の現場はそんな方々にお任せすればいいと。 30歳過ぎた太郎さんのような方に本気で関わっていく人はそうそう居らず「これは俺がやらなきゃいけない仕事じゃないか」と思ったんです。

太郎さんの件をはじめ、私が関わることで就業の機会を得られるのはもちろん、この件以降も入社後に出世する方が何人もいらして。 それで私の頭から「教師になる」という想いがなくなりました。

ものづくりを体験する

治田
会社の紹介もさせてください。 当社ビーネックスパートナーズは、"ものづくり"の現場に優秀な技能社員を派遣する人材派遣業を営んでいます。 国内の様々なメーカーの工場などで、組み立てや生産ラインの運用などを担っており、約3000人が日本全国で活躍しています。

大手エアコンメーカーさんとは長年取引させていただいており、多くの当社技能社員が活躍しています。 当社の新卒営業社員も4月から8月まで「ものづくり研修」として、そこで生産ラインに入らせていただき、エアコン生産を経験してもらってます。

北澤
生産の工程を理解してもらうんですね。 私は高校卒業後に本田技研に入社したんですが、新卒社員は「現場の工程を理解する」ということで、高卒も大卒も全員が生産ラインに入っていましたよ。

治田
現場工程の理解や体験って、絶対必要だと考えています。 同業他社では、新卒営業社員は入社早々に営業現場へ行くようですが、当社の新卒営業社員は生産現場を体験しているので技能社員の想いが分かるんです。 顧客企業からも、技能社員からも「おっ、分かってるじゃん」と一目置かれます。

北澤
技能社員に寄り添うためにも、とてもいい研修制度ですね。

人を大切にしたい

治田
当社の想いやビジョン・ミッションについても紹介させてください。 根本にある想いは次の通りです。

年齢・性別・国籍・経験の有無などに関係なく、
働く意欲があるのに仕事に就けていない人を一人でもなくしたい。

この想いのもと、当社を介して働く人を増やしていくことで、人手不足などの社会課題解決に貢献していきたいと考えています。 この「就業機会の提供」と「社会課題の解決」が、社会に対する当社の存在意義です。

2021年8月に当社グループのパーパス「幸せな仕事を通じて ひとりひとりの可能性をひらく社会に」が制定されました。 先ほど紹介した「私の原体験から得た思い」ともズレがありませんので、私としてはこのパーパスに大きな共感をもってスタートできています。

このパーパスを実現していく上で「当社では何ができるんだろう」ということを改めて考えるために、2022年に当社の企業理念のリニューアルに着手しました。 そのために、営業部門・管理部門の全社員約170名を対象に「あなたの未来像」として、次の3つを回答してもらったんです。

  1. (1)あなたの理想とする社会を教えてください
  2. (2)上記(1)を実現するために当社ができることは何か?
  3. (3)上記(2)を実行するために、あなたが大切にしている価値観、大切にしたい行動は?

結果については表現とか言葉遣いは様々でしたが、全員に共通していることが「人を大切にしたい」という想いだったんです。

北澤
人材の仕事を手掛ける上で、その結果はとても嬉しいですよね。

治田
本当に嬉しかったとともに、当社の成長を確信しました。 この全社員の回答を"企業理念プロジェクトメンバー"で何十回も読み込んで生み出したのが、ビーネックスパートナーズの企業理念です。

ビーネックスパートナーズの企業理念

Vision 仕事を通じて「なりたい」を実現し、はたらく喜びと笑顔のある社会へ
「はたらく」先にある、いろんな「なりたい」を実現するお手伝いをしたい。 「なりたい」を実現することで、従業員と、その周りの人を笑顔にしたい。 幸せの感じ方はひとりひとり違うもの。 働きたい想いの数だけ「はたらく」を提供できる会社でありたい。
Mission 可能性を拡げるパートナーであり続ける
従業員には、就業機会の多様性や、成長のバリエーションなど選択肢を増やし、チャンスを創り続けるパートナーであり続ける。 求職者には、年齢、性別、国籍、経験の有無などに関係なく、働きたいと思う人には誰に対しても働く場を提供できるパートナーであり続ける。 クライアントには、期待に応え、共に成長し続けるパートナーであり続ける。 私たちは、可能性を拡げるパートナーであり続け、未来を共に創っていきます。
Value
  1. 誠実
    ひとり一人に真摯に向き合い、多様な機会を提供し、共に成長する。 それは誰もが「なりたい」を実現できるよう常に感謝を忘れず誠意をもった対応をしていく事である。
  2. 尊重
    ひとり一人が違う存在であることを認め、寄り添い、個々の「なりたい」を尊重する。 それはひとり一人の可能性、働くを大事にする事であり、個々の想い、考えを理解する事である。
  3. 挑戦
    何事も自分事と捉え、常に向上心を持ち、柔軟な思考でひとり一人にとってより良きことは何かを追求する。 それは現状に満足せず、常に新しいことへのチャレンジをしていく事であり、自分の可能性に挑み続ける事である。
  4. 期待を超える
    関わる全ての人に対して常に「期待を超える」を提供する。 それは我々ひとり一人が従業員、求職者、クライアントに対してオンリーワンになる事である。
  5. 社会への貢献
    企業の社会的責任を深く自覚し、我々ひとり一人が法令・社会規範を遵守するとともに、雇用の創出、地域と製造業の活性化に尽力する。 それは事業を通じて様々な社会課題の解決に取り組む事である。

治田
Visionに込めた思いを言い換えるとこんな感じになります。
「働きたい」と思って当社に来てくれる方には、何らかの理由とか想いが絶対あるはずです。 そのひとりひとりのストーリーにしっかり耳を傾けて、その想いの先にあるものを実現するために、働ける場を提供し続ける会社でありたい。
Missionに込めた思いを事例で表現するとこんな感じなります。
ある会社で20人の募集があり、そこに対して100人の応募があったと。 人材サービス同業他社の場合、不採用の80人に対しては「ご縁がありませんでした」になるのですが、当社であればその80人に対して必ずどこかで仕事に就いてもらう努力をし続けます。

現場で活躍中の在籍者一覧を前に
[ジョブパーク名古屋にて]

北澤
80人に対して仕事を紹介するのは、案件集めが大変ですよね。

治田
そうなんです。 でも営業担当は本当に頑張ってくれて、マーケットにある求人ニーズを集めてくれているんです。

このような企業理念ですが、全社員の「未来像」が必ずどこかに含まれているという自負があり、各自が「自分のもの」として捉えてもらえていると考えています。

北澤
全社員が腹落ちしている、組織における共通言語のようになっているんですね。

治田
はい。 かなり時間をかけていいものができました。

継続することの大切さ

治田
この企業理念、掲げておくだけでは実現していきませんので、私は5つあるValueの中から「今日のValue」を決め、毎日意識して行動し続けています。

北澤
やはり先生のような印象です(笑)。 自己啓発じゃないけれども、そういう「習慣付けを続ける」って教育の場面とか、監督のようですよ。 スポーツも同じで、"その瞬間"にこれまでの習慣が発揮できるかどうかだから、日常的に続けることが大切ですよね。

治田
北澤さんは発展途上国の支援をされているじゃないですか。 「支援する」と言うのは簡単ですが、継続するのは大変ですよね。

北澤
はい、ビジョンがないと継続できないですよね。 途上国に対するサッカーの指導は、すぐに成果が表れることはありませんから。 2001年にカンボジアへの支援を始めましたが、その時はグラウンドなどありませんし、地面には地雷が埋まっているかもしれないという状況だったので。 しかし、「2018W杯ロシア大会」の二次予選では、カンボジアは日本と対戦(2015.9.3)するまでに成長しましたからね。 W杯予選に出られるようになると、カンボジアの人たちは夢を持てるようになるし、サッカーを通して幸せを感じられるようになるので、自分が関わってきて本当に良かったと思います。

治田
2001年からの、現地の子供たちに寄り添って指導してきた北澤さんの存在は大きいですよね。
レベル感は違うかもしれませんが、コンクリート会社の太郎さんに寄り添った話と、近しい感じがします(笑)。

北澤
そうですね。 カンボジア・ナショナルチームの監督に本田圭佑さんが就いたりと、20年前とはステージが変わってきています。 今後も様々なサッカー経験者が継続的に関わっていけば、カンボジアの実力は上がっていきますよ。
コンクリート会社の太郎さんは工場長になったとのことですが、寄り添うこと・続けることは大切ですよね。

治田
ありがとうございます。 自分のやってきた事に間違いがなかったと、改めて思えることができました。

パートナーであり続ける

治田
話は変わりますが、40歳の頃に悟りを開いたんですよ。

北澤
悟りの話になってきた!(笑)。 どんな感じなんですか?

治田
「自分は大したことが無い」って。
ですので「分からないことは素直に聞く」、「知ったかぶらないぞ」と。

北澤
それはある意味"楽"ですよね。

治田
そうなんですよ。 だから「分かんないから教えてくれ」っていうのが平気なんですよね。
そうすると親切に教えてくれるじゃないですか。 「すごいな、どうやってやるの?」みたいな会話です。

北澤
そこは今どきな感じがしますね。 まさにティーチングではなく、コーチングのやり方じゃないですか(笑)。

「ナイスパーパス!」

治田
そうなんですかね(笑)

北澤
かっこつけないで、"社員"にも"職を求める人"にも目線を合わせていける人なんですよ。 まさに「パートナーであり続ける感じ」。
企業理念の実現、応援し続けますよ(笑)。